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岩波映画の羽仁進監督の「不良少年」(1961年, 新東宝配給, 90分白黒作品)は、著名であるにもかかわらず目にする機会は少ない。私は、深夜に放送されたものなのか、ケーブルテレビによる放送なのかよく憶えていないが、テレビの前で釘づけになって観たことがある。ビデオ録画もしたはずだが、テープはどこにあるのか自分でも把握していない。そのうち出てくると思う。

いずれにしても、はじめからしまいまで観たのである。映像では冒頭に、この映画がフィクションであって内容については監督に責任があることと、撮影に協力した少年に対する謝意が文字で示される。少年が逮捕され、少年院で生活する様子が描かれている。結末を明かしたとたんにつまらなくなるようなことはないが、プロセスを通じて緊張させられる作品である。

実を言えば、私は岩波映画にあまりなじみがない。このエントリを書く際にちょっと調べて田原総一朗が岩波映画出身だと初めて知ったほどである。

それはさておき、この映画の音楽を武満徹が担当していることはおそらく重要であろう。劇中で用いられている歌は有名な「〇と△の歌」である。今日では小室等がギターを弾きながら歌い、また合唱でもよく歌われている。映画の中でこの歌はごく控えめに、少年院の静かなグラウンドを映したシーンにおいて、うっかりすれば聞き逃してしまいそうなアカペラで歌われている。小室等の歌い方もそれによく似ているように思う。

合唱では、ややメリハリの利いた歌い方がなされるようである。たとえば2008年の新居浜混声合唱団定期演奏会のように。

ところで武満徹とは誰かと訊ねられるかもしれないが、国際的に著名な作曲家である。フィクションながら現実の少年に取材したドキュメンタリー風の「不良少年」に対して、まったく空想的な世界を描いた安部公房原作、勅使河原宏監督1964年の作品「砂の女」(カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞)の音楽も武満徹が担当した(主演の岸田今日子は、羽仁進と同様に自由学園高等科卒業生である)。

武満徹は65歳の癌による死をもって、大江健三郎にさらなる小説執筆の決意をうながすことになった。

さて、どのように話を羽仁進に戻すか。いや、ここに述べてきたとおりであるから、本当は話を戻すことにはあまり意味がないとも思う。ただ、武満徹の音楽が大きな影響力を持っていたことには言及しておかないわけにはいかないと思われるのである。ただ、武満徹の作品の歌詞の最後の部分だけを示しておきたい。バラライカは三角だぜ!

このブログを置いているサイトのドメインネーム dendrocacalia.org あるいは common.dendrocacalia.org というのはどういう意味なのか質問を受けることがあるので、ここに書いておきたい。

Kobo Abe, Beyond the Curve

Dendrocacalia というのはキク科ワダンノキ属の樹木、ワダンノキ (Dendrocacalia crepidifolia) に由来する。小笠原固有の植物であるが、東京の夢の島熱帯植物館で栽培されているものを見ることができる。絶滅危惧種の指定も受けている。

この植物を取り上げた安部公房の短編小説がある。高校生の頃に、新潮文庫の水中都市・デンドロカカリヤに収められたものを読み、登場人物の「コモン君」とともに、拝借したドメイン名である。なお、この小説の Juliet Winters Carpenter による英訳が、短編集 Beyond the Curve に収められ、講談社インターナショナルから1991年に出版されている。

小説「デンドロカカリヤ」はこの2009年春に完結した安部公房全集の、 第2巻と第3巻に収録されている。なぜふたつの巻に収められているのかといえば、雑誌『表現』版(1949年4月20日)と書肆ユリイカ版(1952年 12月31日)という異なる版が存在するためである。詳細な議論はこのエントリでは不要と考えるが、当時の安部公房がワダンノキを実際に見たのかどうかと いうことは少し気になる。どのようにしてこの植物の存在を知ったのか、今のところよくわからない。

安部公房の娘で医師のねりさんに無断で dendrocacalia.org というドメインを取得してしまったが、当時は連絡をとる術を知らず、高校生以来の愛読者として安部公房の名誉を傷つけることはしないということでお許しいただきたいと思う。