つい最近のことである。2009年5月18日に、ドイツのミュージシャンNenaのファンサイトNenas Feuerwerkが閉鎖された。

Nena (写真は2004年7月31日ベルリン GNU FDL)とは、1980年代に西ベルリンで活動を始めたバンドであり、ヴォーカリストの名前(フルネームでは Nena Kerner)でもある。バンドで発表した作品にはNENAと、大文字斜体で表記されていた。バンドは1987年に解散したが、Nena Kerner 自身は1989年以降ソロ活動を続け、現在はハンブルクを本拠としている。バンドの最盛期には世界ツアーがおこなわれ、何度か来日してコンサートを開いている。ソロ活動ではバンド時代の歌も歌うが、新作も多い。また、童謡のCDも発表しており、ドイツの子どもにもおそらく人気が高い。かつてのように世界的なヒットはないものの、ドイツ語圏では確固とした地位を築いている。また、2008年5月27日には、ハンブルクにNeue Schule Hamburgという学校を開いた。
Nenas Feuerwerk は日本で発表されていない Nena の詞を翻訳して公開されているという貴重なサイトであった。最近はごぶさたしているが、サイトの管理人ともメールのやり取りもあって、勉強させられることは多かった。
さて、サイト閉鎖の理由について次のような説明がなされている。
閉鎖の理由は著作権です。
訳詞については作者Nenaの承認を得ておりましたが、著作権法の関係上、掲載できないことが分かりました。
また、編曲して掲載する際にも事前に作者の承諾が必要です(著作権法27条)。Nenaが日本で活動していない以上、継続的に承諾を得ていくのは難しいと判断しました。
そこで著作権法を読んでおきたい。
第27条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
本件でいう著作者とは、いうまでもなくNena Kerner である。翻訳する権利は Nena Kerner にあることになる。
Nenas Feuerwerk のサイトでは、Nena から承認を得て翻訳をしていたのであるから、翻訳そのものが著作権法に抵触するとは考えにくい。日本語に翻訳された歌詞の著作権はといえば、著作権によって次のように定められている。基本的には訳者が著作権を有し、複製や頒布の権利を有するはずである。
第28条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。
ここまでのところ、問題は特にないように思われる。あるいは、Nena が翻訳を認めなくなるとか、Nena 以外の人が作詞した作品が含まれているなどの事情があったのかもしれない。いずれにしても不思議であるし、貴重な資源が失われてもったいないのである。管理者ご本人に事情をお聞きしたいと思う。
また、日本の著作権法とともに、ドイツの著作権法も参照すべきではないかという気がするが、気がかりなのはあの翻訳が原文との対訳だったためではないだろうか。日本語訳だけを掲載することについて問題はないはずである。
いずれにしても、あのサイトを再開してほしいというのが私の希望である。
話は変わるが、Nena が歌ってもっともヒットした 99 Luftballons (邦題「ロックバルーンは99」)に関する日本語版ウィキペディアの記事には、歌詞の大要(当該記事では「内容」と表現されているが、歌詞に直接かかわる記述があるのは日本語版のみである)が掲載されている。この「内容」は、2009年5月20日 (水) 15:00時点における版と2009年5月20日 (水) 16:43時点における版のあいだでかなり変わっているが、オリジナルの歌詞を知っていれば、簡単に歌詞だとわかる程度のものである。
Wikipedia contributors. ロックバルーンは99. Wikipedia, ; 2009 5月 20, 16:43 UTC [cited 2009年6月7日]. Available from: http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AF99&oldid=25988082.
むしろこちらのほうが問題が大きいように思われる。
追記 日本における Nena のファンのメーリングリストもある。今のところアクティビティは低いが、ドイツやアメリカのメーリングリストがspamで使い物にならなくなったのとは対照的に、現在も生きている。
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